神隠し 記憶の裂け目


いつだったか 見覚えのあるこの風景

昔ここで遊んだような でもどこか違うような

ただ廃れてただけなのかもしれないが 始めてきた感じがしない

山の中 遊具の数々 あの頃の子供たち

はしゃぐ はしゃぐ 僕だけが まだ山の外

知っている風景 知らぬ景色 「過去」が「今」と交わる場所


          早く遊ぼうよ 

 見覚えのある子供は僕に話しかけてきた

その子供はどことなく君に似ている いや 寧ろ本人だったのだろう

          子供の時の君 

今の君から僕はどう見えているのだろう

今の僕は大人で 君の過去を知っている だから君を君だと確認できる  でも君は

まだ子供で僕の大人になった姿など分かるはずもない

なのに君は僕に遊ぼうと言っている

ふと 山の中に目をやると  遊んでいる  皆が   青々強い山の中で

現実とは思えない程 森が綺麗なこの山で 時間を忘れたこの空間で

     

    ぼくは 僕を見つめていた


          ここは境界線


          この山で僕は


僕が立ち尽くしていると腕をつかみ早く行こうと引っ張ってくる

    君は笑っている    

      君の笑顔は無邪気で           

        君の微笑みには影が見えた

 悲しい感情   後悔の感情   辛い感情   負の感情

だから 感じ取ってしまった

                      君の無邪気さを


  僕はもう大人になってしまったのだから



時計の針は2時を指していた


山は 深く 深く 木々を生やし 光を飲み込み 深く 深く

         

        内  と  外


          ここは境界線

 

     辺りは夕暮れの色をしていた


    太陽は高い位置にあるというのに


         「ごめん」  僕は言う

 連れがいるんだ だから今は遊べない

覚えていたら また ここにくるよ


いつ来たかは覚えていないけど 遊んだ思い出はあるんだ

だから その時 またーーー


              もうないよ

 君は僕の言葉を遮った


      「神隠し」

ここは山の記憶

私も貴方もここでないどこかで 別の時間で 繋がった

私は内で

貴方は外で

ここは境目 

皆が忘れ置いていった心の一部


きっとあの子も見つけてくれただけで満足でしょう


ここに来るのは 極稀にいる変わり者か


亡くなった魂


山の外 

貴方はまだ人なのです

山の中

まだ来る時ではなかったみたいです


どうかこの山の事は忘れて下さい

貴方はまだ ここよりも覚える事があるはずです


人は忘れる事も大切なのですから

代わりに山が  生まれ育ったこの大地が覚えています

さぁ 歩みなさい

貴方を待つあちら側へ

迷子にならぬよう 気をつけて


造形分解体研Q所

【イラスト】【造形】【文字】を用いて元ある形を分解・解読し新たなる意味を付与させ創造する それを具現化する研究。

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